ホラー作家として有名な著者のSF。隕石落下により、危険指定区域になった大阪が舞台となります。湿布のように貼るドラッグ、皮膚がゼリー化する奇病など、グロテスクなものが次々と出てくるので、読む人によっては不快感を覚えるかと思います。生理的嫌悪感をかき撫でるのがこの著者の持ち味なので、それはしょうがないでしょう。男女の性別、正気と狂気、倒錯と規範など、物語が進む毎にそれらのボーダーが溶けて消えていくような演出は、その結末と密接に結びついていて、素直に巧いと思います。
★分かり易い物語
皆さんは小説を読んでいて、途中で放り投げてしまった経験がおありかと思います。冒頭から、主人公とキャラクターとの中身のない、もしくは真意の掴めない掛け合いばかりだったり、理由も分からずに延々戦い続けていたり、世界観などの説明ばかりだったり――そのような描写だけが続く物語は、読んでいて退屈になりがちです。勿論、そうしたシーンだけでも読ませる物語はたくさんありますが、難易度の高いテクニックであることのは確かだと思います。
これらの物語に共通しているのは、「読み手には一体どういう物語なのか分からない」に尽きると思います。これでは、興味を持ってもらませんし、読み進めても苦痛を伴います。それなら、「どういう物語なのか分かる」ようにすれば、その問題は解決できるわけです。
しかし、「これがこうなって、最後にはああなる」ということがちょっと読んだだけで分かってしまうというのも、何だか面白くないような気がしますね。退屈を避けるために、物語の情報を与えてしまうのか、投げ捨てられるのを覚悟で読み手を引きつけようと、情報を隠し続けるのか――その辺りのさじ加減が、また難しいですね。
ちなみに、どういう物語なのかが一目で分かるようにするには、ハリウッド映画を参考にするといいように思います。ハリウッド映画のストーリーラインはとても単純なものが多く、「何か事件が起こって、主人公がそれを解決する」というパターンが大半を占めています。
では、最近最新作が出た「ダイ・ハード」シリーズの一作目を例にとってみましょう(この間TVでやっていたので)。
・警官の主人公(マクレーン)が別居中の妻に会いにロスの高層ビルを訪れるが、会うなり喧嘩をしてしまう。
・マクレーン夫妻のいるビルに、剣呑な雰囲気の男たちが入ってきて、ビルを占拠する。
序盤は大まかに上記の事柄が起こるのですが、これだけで多くの方は、「たまたま居合わせた主人公が、高層ビルを占拠したテロリストたちと戦う」物語だと推測できるのではないでしょうか。また、冒頭で妻と喧嘩していたことから、最終的にはそれも解決するのではという期待を与えることもできます。
自分の書いた物語を見て「一体どういう物語なのか分かり難い」と思っている方は、こうした手法を試してみるのもいいかもしれません。
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