2007年08月02日

分かり易い物語

★牧野修「傀儡后」読了。

 ホラー作家として有名な著者のSF。隕石落下により、危険指定区域になった大阪が舞台となります。湿布のように貼るドラッグ皮膚ゼリー化する奇病など、グロテスクなものが次々と出てくるので、読む人によっては不快感を覚えるかと思います。生理的嫌悪感をかき撫でるのがこの著者の持ち味なので、それはしょうがないでしょう。男女の性別、正気と狂気、倒錯と規範など、物語が進む毎にそれらのボーダーが溶けて消えていくような演出は、その結末と密接に結びついていて、素直に巧いと思います。


★分かり易い物語

 皆さんは小説を読んでいて、途中で放り投げてしまった経験がおありかと思います。冒頭から、主人公とキャラクターとの中身のない、もしくは真意の掴めない掛け合いばかりだったり、理由も分からずに延々戦い続けていたり、世界観などの説明ばかりだったり――そのような描写だけが続く物語は、読んでいて退屈になりがちです。勿論、そうしたシーンだけでも読ませる物語はたくさんありますが、難易度の高いテクニックであることのは確かだと思います。

 これらの物語に共通しているのは、「読み手には一体どういう物語なのか分からない」に尽きると思います。これでは、興味を持ってもらませんし、読み進めても苦痛を伴います。それなら、「どういう物語なのか分かる」ようにすれば、その問題は解決できるわけです。

 しかし、「これがこうなって、最後にはああなる」ということがちょっと読んだだけで分かってしまうというのも、何だか面白くないような気がしますね。退屈を避けるために、物語の情報を与えてしまうのか、投げ捨てられるのを覚悟で読み手を引きつけようと、情報を隠し続けるのか――その辺りのさじ加減が、また難しいですね。

 ちなみに、どういう物語なのかが一目で分かるようにするには、ハリウッド映画を参考にするといいように思います。ハリウッド映画のストーリーラインはとても単純なものが多く、「何か事件が起こって、主人公がそれを解決する」というパターンが大半を占めています。

 では、最近最新作が出た「ダイ・ハード」シリーズの一作目を例にとってみましょう(この間TVでやっていたので)。

・警官の主人公(マクレーン)が別居中の妻に会いにロスの高層ビルを訪れるが、会うなり喧嘩をしてしまう。
・マクレーン夫妻のいるビルに、剣呑な雰囲気の男たちが入ってきて、ビルを占拠する。

 序盤は大まかに上記の事柄が起こるのですが、これだけで多くの方は、「たまたま居合わせた主人公が、高層ビルを占拠したテロリストたちと戦う」物語だと推測できるのではないでしょうか。また、冒頭で妻と喧嘩していたことから、最終的にはそれも解決するのではという期待を与えることもできます。

 自分の書いた物語を見て「一体どういう物語なのか分かり難い」と思っている方は、こうした手法を試してみるのもいいかもしれません。
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2007年05月14日

旅人について(※嘘です

★デーヴ・グロスマン「戦争における『人殺し』の心理学」読了。

 小説ではなく、兵士の心理を数々の証言や史実から、徹底分析した本です。戦地へ赴いて敵を殺す、または殺したときの心理はどういうものなのか、また、何が兵士たちをそうさせるのかが、分かり易く解説されています。「人を殺す側に立った小説」を書く方は、読まれた方がいいと思いますね。独自の舞台・設定で社会構造作るときにも、役に立つと思います。


★近況報告

 実は今、こんなことしています。もう半分ぐらいきた、って感じです。

 やっていて、諸国を遍歴する「旅人」の気持ちが少し分かったような気がします。自分が好きな中世ヨーロッパ時代の旅というのは、こんなに生易しくはないんだろうなぁと思いながら、いろいろと妄想していたり。
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2007年05月04日

小説のローカルルール2

★細音啓「黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで」読了。

<名詠式> と呼ばれる力を学ぶ、学園を舞台に異世界ファンタジー。作中によく詩が出てくるのですが、ドイツ語(?)にルビで訳が振ってあり、正直なところ読むのに根気が要ります(というか詩は殆ど読み飛ばしてしまいました)。世界観としてはかなりやんわりしていて、戦闘シーンはあるものの泥臭くも血生臭くもなく、終始繊細な印象です。残念なのは後半は視点がとびとびしていて、注意深く読まないと誰が誰なのか分かり難いです。


★小説のローカルルール2

 以前、同じような内容の記事を書いたと思うので今回は第二弾です。小説のローカルルールとは何ぞやということでかいつまんで説明させていただきますと、自分の書く小説は「」や『』をどういうときに使うのか、ということをあらかじめ決めようという話です。作中で電話の声なんかがあった場合、電話から聞こえる声は『』で表現する、というのは多くの方が使っている手法ですね。それに限らず、自分の小説だけでの決まりごとを設定しておけば、読み手がパターンを理解できて読みやすい――と、こういうお話です。

 今回は、ローカルルールというよりは、もっと基本的なことかも分かりません。

 それは、ずばり「ひらがなと漢字」です。ちょっと例文を出させていただきます。

 -----------------------------------

 僕達は美術館へと向かった。奴がそこにいるという確信があったからだ。
 開かれたエントランスホールへ入る。
 だが、其処にヤツの気配は無い。
 何処に居るのだろう。
 僕たちは更に奥へと進んだが、やつの姿はどこにも見当たらなかった。
 

 -----------------------------------

 わざとらしい文章ですが、読んだ方はおかしな点に気付かれたのではないでしょうか。上の例文では、一つの単語に対して、ひらがなとカタカナ、そして漢字が混在して使われている箇所がいくつもあります。「僕達」と「僕たち」、「いる」と「居る」、「そこ」と「其処」、「何処」と「どこ」……。「やつ」に至っては、カタカナまで混ざっていますね。ここまで極端な文章はないと思いますが、長編小説を書いているとき、「なぜ」を何十回使ったうちの一回ぐらいはうっかりで「何故」になっていることはあるのではないでしょうか。

 キャラクターの独白や台詞によって、漢字や文調を使い分けるのは上等なテクニックだと思いますが、地の文でこれでは何だか文体が定まっていない、チープな感じすらします(例文がチープなのは置いといて)。

 前回の「検索」を利用して、使用する漢字を統一しておくと、文章のレベルが上がるのではないでしょうか。或いは、あらかじめ「使用漢字表」のようなものを作っておくといいかもしれません。

 かくいう自分のブログも、その辺りのルールはでたらめですが……(苦笑)。
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2007年04月29日

誤字脱字を検索

★マイクル・ムアコック「白き狼の息子」読了。

 SFファンタジー。新三部作と銘打たれた「夢盗人の娘」「スクレイリングの樹」に続く三作目で、一応の完結編となります。 ウーナの孫娘ウーナッハの視点で主に綴られる物語は、さながらムアコック版「不思議の国のアリス」といった印象です。話のスケールが <法> と <混沌> の戦いからほぼ <天秤> に移行してしまい、 <上方世界の神々> の出番がほぼ皆無なのは残念ですが、完結編に相応しい作品だと思います。


★誤字脱字を検索

 お久しぶりになってしまいました。今回は文章の誤字脱字についてです。パソコン、ワープロなどで書いているという前提で進めさせていただきますが、文字自体の書き間違いはなくなっても、打ち間違い、誤変換はなくならないものです。原稿用紙三枚分とか、その程度の文字量なら、間違いはないかも分かりませんが、たとえば公募用に三〇〇枚も書いたときなど、目で探すのも一苦労です(やらなければいけないんですけどね)。

 そういった誤字脱字のチェックを少しでも楽にするには、どうすればいいのか考えてみました。

 まず、誤変換からですが、漢字には同じ読み方でも微妙に意味が違うものなどがありますね。たとえば、「写真におさめる」「学業をおさめる」「税金をおさめる」「国をおさめる」――それぞれ、「おさめる」には違う漢字が当てはまります。

 どれにどの字を入れるのが正しいのかが分かっていても、もし、これらの字を使う場合、常にこの四択から選ばなければならないのです。つまり、意味が分かっていても誤変換の危険性がある、というわけですね。

 誤変換のチェックをするときは、パソコンに備わった偉大な機能「検索」を使いましょう。ですが、それには、何を検索するのかという、検索項目がなければなりません。ですので、もし執筆途中に、「この字の使い方、これで正しいのかな?」というような疑問が湧いてきたときなど、その悩んだ語句をどこかにメモしておきます。そして作品が出来上がってから、まとめて「検索」でその語句を入れるわけです。

 このとき、もし執筆中にその語句に対してこれが正解だという結論が出ていたとしても、正解と間違いの両方を検索してみることです。疑問を抱く以前にその語句を何気なく使用していることもありますし、誤変換して間違った方をそのまま使っている可能性もあります。それに、そのとき出た「正解」が、実は間違っていることも、あるかもしれませんし。

 以下はよく見る間違いを、三つばかりチョイスしてみました。
・「確率」と「確立」(これは高確立で間違っている)
・「話」と「話し」(私の話しを聞いて!)
・「言った」と「行った」(君は僕に行った)


 勿論、誤字脱字のチェックが以上で終わりなわけがありません。検索で出てこない誤りなどは自分の目(或いは他人の目)で確認するしかないのです。また、おかしな日本語など、文章自体の誤りは検索できません。つまらない間違いを、読み直す前に潰す――そんな程度ですが、間違いが少ない分、他の間違いに集中できると思うので、結構重要だと思います。

 さて、検索検索……。
posted by 洋樹 at 12:01| Comment(0) | TrackBack(1) | 文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月07日

正しい日本語

★古橋秀之「ブライトライツ・ホーリーランド」読了。

 SFファンタジーです。混沌とした積層都市ケイオスヘキサを舞台にした「ブラックロッド」「ブラッドジャケット」に続く、三作目になります。完結編ということなのか、独特の迫力ある描写で、世界観ごと徹底的に破壊していく、そんな感じです。外連味があって面白いのですが、出てくるキャラクターがばんばん死んでいくので、読む人を選びます。


★正しい日本語。

 最近「日本語力」なんていう言葉を耳にします。多分、インターネットや若者言葉が氾濫した反動なのでしょうが、小説を書くに至ってはこれがないと失笑を買ってしまうのではないかと思います。自分も、拙い語彙から言葉を捻り出したときなんかは、それが間違った意味でないのか一応調べています。

 日本語力で調べていたら、こんなものが出てきました。

 日本語力チェック 一問一答!日本語ドリルで実力判断

 ちょっと面白いので、お暇な方は挑戦してみて下さい。自分は八問正解でした。ちなみに、gooやATOKの回し者ではないですよ。goo辞書はそれこそ毎日のように利用していますが。

 こうした日本語力を鍛えるには、やはり本を多く読むことでしょうか。そして分からない部分を調べる――おそらく、この繰り返しなのではないかと思います。更に一歩踏み込んで、日常会話で使ってみる……が実践できれば、きっと自分のものにできるのではないでしょうか。そういえば、「正しい日本語DS」なんていうゲームもありますね。何にしても、語彙を増やすのは勿論、意味を取り違えて恥をかかないためにも、日本語力は大事です。

 余談ですが「小走りになる」という言葉を聞いて、どういう意味か分かりますか?

 普通は「歩いている状態から小走りになる」、つまり「少し急ぐ」といった意味になるのでしょうが、どういうわけか自分は「走っている状態から小走りになる」→「息切れし、遅くなる」と思い切り意味を取り違え、某所で恥をかいている最中です(苦笑)。日本語力、本当に大事です。


日本語文章能力検定協会協力 正しい日本語DS
http://www.nihongo-ds.jp/
posted by 洋樹 at 14:21| Comment(2) | TrackBack(0) | 文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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